「米Rackspaceがクラウドの低価格競争から脱出、 AWSもついに厳しい競争に直面」

掲載者: CUPA総合アドバイザー 新野 淳一

米国のクラウドサービスとして人気のRackspaceは、従来のIaaS型クラウドサービスプロバイダーという業態を転換。マネージドサービスを組み込んだクラウド、「Managed Cloud」(マネージドクラウド)という新サービスの提供へと軸足を移しました。

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Managed Cloudカンパニーを掲げたRackspaceのトップページ(赤線は筆者による)

「Managed Cloud」は同社による新語です。従来のIaaS型クラウドサービスでは構築や運用をすべて利用者がセルフサービスで行わなければなりませんでしたが、RackspaceのManaged CloudではクラウドプロバイダーであるRackspace自身がそれらをすべてやってくれます。同社のトップページでは、次のように説明されています。

We’ll design, build, and run the best cloud for your unique needs—backed by the results-obsessed service that we call Fanatical Support®. It’s what the commodity cloud providers can’t deliver.
(訳) 私たちがお客様固有のニーズに対応した最適な設計、構築、運用を行います。それは結果を出せるサービスであり、私たちは「Fanatical Support」(熱烈サポート)と呼んでいます。これはコモディティとなったクラウドプロバイダーにはできないことです。Managed Cloudサービスでは、同社のエンジニアにシステムの設計からOSのインストール、パッチ適用、トラブルシュートまで任せることができます。

パブリッククラウド、特にIaaS型クラウドサービスでは、Google、Amazonクラウド、Microsoft Azureが低価格競争の真っ最中です。Rackspaceが選んだManaged Cloud、つまり設計構築運用保守付きのクラウドサービスは、GoogleやAmazonやMicrosoftのような巨大すぎるクラウドプロバイダーでは提供することができません(その代わり、設計や構築や運用などを肩代わりしてくれるサードパーティがエコシステムとして存在します)。Rackspaceは自社が生きる道として巨大プレイヤーが入ってこられない分野を明確に選択したわけです。これは次に書くように、ここ最近でさらにクラウドの競合環境が激化しているのと関連しているのでしょう。

クラウドのシェア、マイクロソフトとIBMが激しく追い上げる

Googleがクラウド市場でAmazonクラウドへの対抗意識をあらわにした値下げを発表したのが今年の3月。Amazonクラウドも翌日には対応した値下げを発表しました。この価格競争がはじまって以来、クラウド市場には新たな変化が少しずつ起きています。上記の米Rackspaceのマネージドクラウドへの転身もそうでしたが、値下げ後の第2四半期についてクラウドベンダが発表した売り上げを分析した米シナジーグループの調査レポート「Microsoft and IBM Chase Amazon while Google Falls Off the Pace」では、値下げを先導したGoogleとAmazonクラウドの売り上げ成長率に明確な変化が起きています。下記のグラフを見ると、る第2四半期は、クラウドインフラストラクチャーのサービスにおいてマイクロソフトとIBMが明らかに成長のリーダーであることが示されています。AWSは引き続きこの市場のトップを走っていますが、これまでずっと続いてきた、2位以下4社の合計よりも大きいという状態は終わりました。AWSは厳しい競争に直面し、クラウド売り上げの面でこれまで同様の成長を見せなくなり、過去1年間で49%へと成長率を落としたようです。AWSだけでなく、Googleも高い成長率を維持できませんでした。

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シナジーグループの分析では、AWSの四半期売り上げは10億ドルを超えており、そのほとんどはクラウドインフラストラクチャサービスからのものだとのことです。IBMとマイクロソフトも四半期の売り上げは約10億ドルとしていますが、両社の売り上げの多くはソフトウェア/SaaS、クラウド関連のハードウェア製品、もしくは関連のプロフェッショナルサービスやサポートサービスからだと分析されています。ただしマイクロソフトは値下げ開始のタイミングを他社より遅く設定したので、その影響はこれからでてくるのかもしれません。