日本は主要クラウドベンダーの激戦区に。 VMwareも国内データセンターでパブリッククラウド参入

掲載者: CUPA総合アドバイザー 新野 淳一

仮想化ソフトウェアの最大手であるVMwareが、クラウドサービス「vCloud Hybrid Service」のデータセンターを国内に開設し、年内にも正式に開始することが7月15日に発表されました。

VMwareが提供するvCloud Hybrid Serviceの最大の特長は、オンプレミスのVMware vSphere環境と互換性があるため、プライベートクラウドとの相互運用性が高く、ワークロードなどをそのままパブリッククラウドへ移行できる点や、ネットワーク仮想化を通じてハイブリッドクラウドを仮想的な1つのクラウドのように見せることが容易にできる点などにあります。さて、今年に入ってからはVMwareだけでなく、マイクロソフト、SAP、IBMとビッグプレイヤーが相次いで日本国内にデータセンターを設置しています。これまで日本(もしくは日本周辺)にデータセンターを開設した主要なクラウドベンダーを時系列で並べてみましょう。

2011年3月  Amazonクラウドが東京データセンター開設
2011年12月 セールスフォース・ドットコムが東京データセンター開設
2014年2月  マイクロソフトが日本データセンター 東日本&西日本リージョン開設
2014年3月  オラクルがOracle Service Cloud(旧RightNow)の日本データセンターを開設
2014年4月  SAPジャパンがSAP HANAクラウドデータセンターを東京と大阪に開設
2014年4月  Googleがアジアデータセンター(台湾)開設
2014年7月  VMwareが国内にデータセンター開設
2014年末まで IBMがSoftLayerの国内データセンターを開設予定

Googleの台湾データセンターを含めると、グローバルにクラウドを展開している主要ベンダが軒並み日本にデータセンターを開設し、日本は急速に激戦区化が進みました。しかもいま、クラウドは値下げ競争の最中ですGoogleは今年の3月にクラウド料金の大幅な値下げを発表し、今後もムーアの法則に則った積極的な値下げを行っていくと宣言、規模と体力にものを言わせた価格競争の引き金を引きました。これまでクラウドの実質的なプライスリーダーだったAmazonクラウドはGoogleが値下げした翌日に値下げを発表。マイクロソフトは以前から価格競争について行くことを宣言していますので、当然ながらこの価格競争を受けて立ち、同じく値下げを実行しています。この価格競争には、グローバルなクラウドベンダだけでなく、国内のクラウドベンダも巻き込まれていくことでしょう。体力勝負がクラウド市場で続く限り、例えグローバルなプレイヤーであってもこの先、3年後、5年後に生き残ることができるクラウドベンダの数は絞られてくるはずです。果たして激戦の国内クラウド市場をくぐり抜けて、何社が生き残れるのでしょうか。

日本マイクロソフトとIIJがクラウドで協業発表

こうした中で、インターネットイニシアティブ(IIJ)と日本マイクロソフトは、両社のクラウドであるMicrosoft AzureとIIJ GIOを閉域網で接続することを柱とする協業を発表しました。IIJの代表取締役社長 勝栄二郎氏と日本マイクロソフトの代表執行役社長 樋口泰行氏は共に、複数のクラウドを使い分けるマルチクラウドがエンタープライズ市場で標準的になっていくとし、そのための協業であることを強調しました。

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握手をする日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏(中央左)と、IIJ 代表取締役社長 勝栄二郎氏(中央右)

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協業の具体的な内容は、Microsoft Azureのデータセンターに専用線で直接接続できるExpressRouteを利用し、Microsoft AzureとIIJ GIOのクラウドを閉域網で相互接続した「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure」をIIJが提供すること。これによって利用者はMicrosoft AzureとIIJ GIOのクラウド、さらにオンプレミスのシステムを柔軟に利用できるようになります。「協業によってエンタープライズのお客様もオンプレミスとパブリッククラウドのシステムをつないでサービスを自由に利用できる、ということが実現する」(日本マイクロソフト 業務執行役員 佐藤久氏)。Microsoft Azureへ直接接続を行うExpressRouteは5月から米国や欧州でサービスが開始されており、IIJは日本初のパートナー。IIJはExpressRouteの再販も行うとのことです。両社は今後、共同での営業やマーケティングなども行うとしています。国内のクラウドベンダーはこのように、グローバルなクラウドベンダーと直接対決するのではなく、手を組むことでマルチクラウドのニーズに応えるための協業戦略をとることも今後増えてくるものと思われます。

IaaSとPaaSの国内成長率は前年比51%増、2014年の市場規模は916億円。3年後には2倍以上に。矢野経済研究所

国内クラウド市場の規模について、矢野経済研究所は、国内のIaaS型クラウドサービスとPaaS型クラウドサービスの市場調査結果を発表。2014年には市場規模が事業者売上高ベースで前年比50.9%増の916億円と、大きく拡大するとしました。

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同社はIaaSとPaaSを合わせて「クラウド基盤サービス」と位置づけています。このクラウド基盤サービスは2013年から大きく伸び、普及期に突入したと説明。かつてはECサイトなどWebサービスの基盤として利用したり、バックアップの目的で利用したりといったところが主流であったが、2013年は社内業務システム基盤としての活用が増加している。クラウド基盤利用の事例が増加し、ユーザー企業(利用者)の意識が変わったことでパブリッククラウドの利用拡大が進んだと考える。(「調査結果の概要」から)クラウド事業者はクラウドビジネス拡大のために、SIerとの協業によるエコシステムの拡大に動いていると指摘。クラウドビジネスの拡大には自社クラウド基盤サービスを普及拡大させるエコシステムの展開が重要であるため、各クラウド基盤ベンダーはSIerと協業し、自社サービスを訴求していく関係を構築しようとしている。(「調査結果の概要」から)

今後はクラウド事業者とパッケージベンダーとの協業によるクラウド上でのパッケージソフトウェアの提供拡大や、基幹系システムのクラウド利用、ビッグデータを活用した新規ビジネスでの利用などが市場に貢献し、3年後の2017年には2014年の2倍以上となる2196億円の市場規模になると同社は予想しています。