SDNかNFVか、ネットワークベンダーはどう動く?

掲載者:CUPA総合アドバイザー 森 洋一

今や話題先行気味のSDN(Software-Defined Network)に対し、NFV(Network Functions Virtualization)が静かに浸透しつつある。このNFV(White Paper)は、AT&T(米)やBT(英)、CenturyLink(米)、China Mobile(中)、Colt(英)、Deutsche Telekom(独)、KDDI(日)、NTT(日)、Orange(仏)、Telecom Italia(伊)、Telefonica(スペイン)、Telstra(オーストラリア)、Verizon(米)などで構成するインダストリーコンソーシアムが自ら抱える課題解決のために考え出したものである。キャリアやプロバイダーが展開するセンター群には、ネットワーク機器群が所狭しと並び、それらの保守管理、さらには増設には気が遠くなる作業が伴う。NFVではこれら機能をソフトウェア・アプライアンス化し、統合サーバーの仮想空間で稼動させる。

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周知のようにSDNは自由なネットワーク環境を求める研究者などが考え出したものである。この2つについて、曰くSDNはソフトウェアの視点から、NFVはハードウェアからのアプローチだとするもの、SDNは上からでNFVは下から、さらにはSDNは理想論、NFVは現実論だともいう。White Paperに興味ある関連図(右)がある。NFVチームが纏めたものだ。この図では、SDNはネットワークの抽象化によって積極的な改革を目指し、NFVはCAPEX(Capital Expenditure-不動産設備投資)やOPEX(Operating Expense-運営費)の改善、さらには設置スペースと電源消費の削減が目的であるとしている。そしてSDNもNFVも、外部企業によるOpen Innovationによって競合力を作り出さなければいけないと指摘。つまり、2つは競合するものではなく、共にオープン化によって進化・共存ができると説明する。とは言え、実際のところ、大手ベンダーはどう動くのだろう。

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=Cisco Systems=

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時代の転換期にさしかかり、Ciscoの動きは複雑だ。NFVが基本の立場にありながら、CiscoはXNC(eXtensive Network Controller)を出してSDN分野への積極的な進出を思わせたり、さらにはNexus 1000VによるVXLANサポートでVMware連携も実現させた。しかし、これらはCiscoが複合的な独自戦略を進めているサインと見るべきである。鍵となるのはCisco UCS(Unified Computing Server)だろう。このサーバーにNFVのアプライアンス群を統合して、省スペース、省エネを図る戦略だ。Ciscoは、搭載ソフトを探すため、外部ソフトウェアベンダーとも積極的に交渉している。特に、以前からCiscoと関係が深く、最近、再投資が行われたスピンイン企業Insieme Networksは要注意だ。

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この会社では、SDN関連製品が開発されている。
Cisco/EMC/VMwareの3社が設立したVCEという会社を思い出して欲しい。VCEはCiscoのサーバーにVMwareを載せてEMCのストレージを繋ぎ、高信頼性と総合的なサポートが売りだ。
しかし、VCEビジネスが上手くいっているとは言い難い。こんどこそ、UCSを前面に押し出せる絶好のチャンスでもある。

=Brocade Communications=

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Brocade Communicationsにとって、気になるのはCiscoとSDNの動きである。
しかし状況は流動的だ。BrocadeはASICベースの高速ファイ
バーチャネルスイッチやイーサネットスイッチなどを得意する。
そのBrocadeがVyattaを買収したのは2012年11月だ。
そしてvRouterを手に入れた。この有名なアプライアンスは、オープンソースとして開発され、ルーティング、ファイアウォール、VPNなどの機能を持ち、殆ど全ての仮想環境で動作する。vRouterは世界中で100万ダウンロード以上を達成、AWS上に展開して利用するユーザーも多い。Brocadeはこれを基点に、アプライアンス化を進め、時代の流れに乗る戦略だ。

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実際のところ、ロードバランサー機能を持つApplication Delivery Controllerの ADXはソフトウェアアプライアンスとして、昨年末にリリースされた。しかしこのアプライアンス化の加速だけでは、市場環境に打ち勝つのは難しい。なぜなら、競合他社も同じ道を模索しているからだ。こうして、
BrocadeはVyattaがオープンソースで成功したようにOpenStackとの連携に乗り出し、VCS、VDX、vRouterのNeutronプラグインの提供を開始した。Vyattaを核によりオープン化を進め、アプライアンス化を推進する。Open vSwitch対応も済んだ。次はOpenDaylight待ちである。

=Juniper Networks=

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Microsoftに16年在籍したKevin Johnson氏がCEOとしてJuniper Networksに参加したのは2008年9月。まったくのソフトウェア人間だ。どうやってハードウェアに囲まれたネットワーク機器の世界を改革するのか、それが課せられた課題であった。その彼が2012年12月、極秘(ステルスモード)でSDN関連製品を開発していたContrail Systemsの買収を決めた。そして、昨年9月中旬、Juniperの新ネットワーク戦略が姿を現した。この戦略はNFVを基本にしながらも、システム全体をSDNコンセプトに適合させて、両者の中道を行き、そして同社をソフトウェア会社に変身させる野心的なものである。

買収したContrailは中核となるSDNコントローラー(上図中央)を開発、NFVの各種アプライアンスは仮想マシン上で稼動する。Juniperから見るとOpenFlowはプロトコルのひとつだ。実際のネットワークにはBGPやXMPPが使われており、Contrailはこれらにも対応する。Contrailは有償のライセンス版だけでなくオープンソース版も登場。このために組織化したOpenContrail.orgからダウンロードが出来るし、これによって3rd Partyを巻き込んだCloud SDNのエコサイクルの構築を目指す。発表のもうひとつの衝撃はこのエコサイクルを具現化したIBMとの提携だ。
この提携ではIBM SmartCloud OrchestratorとContrail SDN Controllerが統合され、クラウドからネットワークまでの新しい形が現れた。新サービスはIBMからユーザー企業やクラウドプロバイダー向けに提供される。ソフトウェアライセンスも大きく変わった。これまでのライセンスは該当機器と対になり、その保証も限定的だった。新たなライセンスでは、どのように使用しても構わず(Full Use/Elastic)、譲渡可(Transferable)、かつ、期間中は永久保証(lifetime Assurance)である。Juniperは、これまでキャリアや大手企業向けの高性能ルーターやスイッチ、IDSやUTMなどのセキュリティ製品を得意としていた。しかし時代は急激な変化を必要としていた。CEO の Kevin Johnson氏は、将来を見据え、Contrailを買収してオープンソース化、それをテコにライセンス改定、エコサイクル構築への道を選んだ。ネットワークの機器屋からソフトウェア屋への変身である。