AWSが創るクラウドエコシステム

掲載者:CUPA総合アドバイザー 林 雅之

Amazon Web Services(以下、AWS)がサービスの拡充とエコシステムの形成によりクラウド市場のマーケットをリードしています。

調査会社のガートナーが2012年8月18日に発表したパブリッククラウド事業者を対象とするリポート“Magic Quadrant for Public Cloud Infrastructure as a Service”によると、AWSは「リーダー」のポジションに位置付けられています。

AWSは、クラウドサービスそのもののサービスや機能拡充だけでなく、自社のクラウドにつながるサードパーティを呼び込み、健全性を確保しつつ影響力のある巨大なクラウドエコシステムを形成することで、市場への競争力とプレゼンスを高め、クラウド市場の成長を後押ししています。AWSはこれまで、多くの機能向上とサービスを提供し、2012年11月までに150を超える新サービスとアップデートを発表、さらには、過去6年間で20回を超える値下げを実施するなど、顧客からのフィードバックや規模の拡大により持続的なイノベーションを生み出しています。これまではスタートアップ企業や、クックパッドやgumiなどのWebサイトやECサイト、ソーシャルゲームなどのコンシューマ向けのサービスに採用されていました。2012年になってからは、金融機関をはじめとしたミッションクリティカルで高い要求が求められるエンタープライズ領域での採用も急速に進んでおり、2013年はエンタープライズのプライベートクラウドの領域とも競合する機会が増加していくことが予想されます。

AWSが重点を置いているのは、クラウドエコシステムで、自社のサービスの拡充を図ると共に、独自APIを提供し、コミュニティーなどを通じて多種多様のサードパーティを取り込み、独自のクラウドエコシステムを強力に展開しています。

日本においては、AWSのユーザー会「AWS User Group Japan(略称JAWS-UG)」などによるコミュニティー戦略でユーザーのすそ野を広げるとともに、ビジネスパートナー企業となるAWSソリューションプロバイダーに力をいれ、エンタープライズ向けへの販路の拡大を図っています。JAWS-UGのコミュニティーは各地で広がりを見せ、2009年は東京のみだったのが、2010年には名古屋、大阪、福岡、札幌、2011年には女子会が立ち上がり、金沢、仙台、京都などの地域で立ち上がり、その後も全国各地で広がりを見せ、その拡大とともにAWSの利用者を拡大させています。

また、AWSソリューションプロバイダーを重要なエコシステムを支えるプロバイダーと位置づけ、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)47社やシステムインテグレーター(SI)41社およびAWS Direct Connect サービス(専用線接続サービス)をサポートするAWS Direct Connect ソリューションプロバイダー5社、AWS グローバルストラテジックパートナー9社の4カテゴリで総勢100社(2012年12月31日現在)を超える事業者が参加し、強力なクラウドエコシステムを構築しています。

AWSの事業のスタンスは、ユーザーが求めているサービスの最大公約数に重点投資をし、それぞれのサービスのコア技術を提供し、APIを公開することでユーザー自身が開発できる環境を用意し、足りない部分は国内では約100社、世界では1,000社を超えるパートナー企業を通じて、ユーザーニーズにあわせたサービスの構築を実現しています。エバンジェリスト(Evangelist)の存在も、コミュニティーやビジネスパートナーにおいての重要な役割を担っています。日本では、玉川 憲氏、堀内 康弘氏の2名がエバンジェリストとして活躍しており、コミュニティーとの共存、さらには自社のクラウドサービスの認知度向上に大きく寄与しています。

クラウド事業者の多くは、スタートアップ企業を支援するために開発者向けのコンテストなどを開催し、優秀な開発者には、開発支援や投資支援、コワーキングスペースの提供、そして、クラウド環境の提供を行うなど、将来の成長が見込まれる顧客に対しての支援を行っています。AWSなどのクラウド事業者にとっては、斬新なアイデアを持ち開発力を持つスタートアップ企業の開発支援を行いうことで将来の優良顧客を取り込み、自社のクラウドエコシステムに取り込んでいくことが、クラウドビジネスの持続的な成長と、競争優位の源泉の一つとなっています。AWSは、コミュニティーによるすそ野の拡大、ビジネスパートナーによる販路の拡大、エバンジェリストによる普及推進、事例紹介やイベントセミナーの開催、スタートアップ企業の囲い込み、日本向けのローカライズを進めることで、少人数の社員でも最大の販売成果を発揮するエコシステムを形成しています。

AWSは、新サービスの提供やアップデートの情報が注目されますが、AWSの躍進は、むしろこの一連のクラウドエコシステムが支えているといえるでしょう。