Cloud Foundryを中心としたPaaS市場の動向

掲載者:CUPA総合アドバイザー 林 雅之

「Windows Azure」や「Force.com」など垂直統合型の「Proprietary PaaS」に対して、2011年に入ってから、米VMwareが提供する「Cloud Foundry」や米Red Hatが提供する「OpenShift」など、AWSやOpenStack、CloudStackなどのIaaS上に構築されるオープンソースのPaaS基盤ソフトウェア、「Open PaaS」が台頭しています。

「Open PaaS」は、IaaSとは独立して機能し、Ruby、Java、Python、PHPなど複数の開発言語、Ruby on Rails、Sinatra、Spring Framework、Node.jsなどのオープン標準に準じた開発フレームワーク、MySQL、PostgreSQL、MongoDBなどの複数のデータベースに対応しているのが特徴です。代表的なOpen PaaSは、Cloud Foundryです。Cloud Foundryは、VMwareが2011年4月、Open PaaS戦略に基づいて発表されたRubyで実装された複数の開発言語、開発フレームワーク、データベースに対応したオープンソースのPaaS基盤ソフトウェアです。

調査会社の米Evans Dataが2011年11月16日に発表した「ユーザ満足度調査」では、クラウド開発に参加しているソフトウェア開発者は、「トップクラウドプラットフォーム」の評価において、全体での最高点を獲得するなど、フレームワークやアプリションサービスも含めた選択肢を提供したことが開発者から高く評価されています。

VMware は2012年4月12日には、新たなエコシステムの提供を発表し、コミュニティ向けのソースコード提供の簡素化などを実現する新ソースコード管理システム「CloudFoundry.org」を導入することで開発コミュニティの幅広い参加を促しています。同日、VMware vSphereおよびAWS、OpenStackのIaaS上でのCloud Foundryの構築、展開、ライフサイクルマネジメントが行える「Cloud Foundry BOSH」というツールも発表し、IaaSとの連携も強化しています。さらに、Cloud FoundryをベースにPaaSを展開するクラウド事業者向けに、クラウド事業者間でアプリケーションのポータビリティ(移植性)を保証するプログラム「Cloud Foundry Core」も公開しました。「Cloud Foundry Core」に参加する事業者同士であれば、異なる事業者でもCloud Foundry上の実行環境であるJava、Ruby、Node.js、MySQL、PostgreSQL、MongoDBなどのポータビリティが実現できます。クラウド事業者間で相互の互換性を持つことでクラウドロックインの懸念を払拭し、Cloud Foundryを中心としたオープンなエコシステムが形成しやすくなります。「Cloud Foundry Core」には、appfogやTIER3などの5事業者が参加し、日本からはNTTコミュニケーションズが参加しています。

VMwareは、PaaSやビッグデータ領域などの上位レイヤーの展開の強化に向けて組織再編を行っています。VMwareとその親会社の米EMCは2012年12月4日、PaaSとビッグデータ領域にフォーカスした新組織「Pivotal Initiative」を発表しました。2013年3月7日には、Cloud Foundryが「Pivotal Initiative」に移管されたことが発表されています。発表の中には、Cloud Foundryは開発者との連携によるオープンな開発環境を提供していくことを明記するなど、オープン性を強調しています。

日本国内での事例についても紹介しましょう。2012年2月25日、NTTとNTTコミュニケーションズが発起人となり、楽天、VMware、富士通SSL、NECソフトなどによる開発コミュニティの「日本Cloud Foundryグループ」を設立し、Cloud Foundryに関する日本語による情報共有や情報発信による普及促進を図っています。

楽天は、楽天トラベルなどのサービス開発環境や提供基盤に、プライベートPaaS「Rakuten Platform as a Service」を社内向けに提供し、開発担当がサービスの開発に専念できる環境を整えています。このプライベートPaaSの環境構築にCloud Foundryを採用しています。また、NTTコミュニケーションズは2013年3月28日にCloud Foundryを採用した「Bizホスティング Cloudn PaaS」の本格的な提供を開始しています。

PaaSレイヤーの市場は、成長分野と期待されていながらも、IaaS市場のAWSのようなマーケットリーダーが存在せず、IaaSと比べると各社のサービス形態や料金体系の比較が難しいなどの理由で、市場の状況が見えにくい状況にあります。

海外勢ではマイクロソフトの「Windows Azure」、セールスフォースドットコムの「Force.com」、「Heroku」、Engine Yardの「Engine Yard Cloud」。国内事業者では、ニフティの「ニフティクラウド C4SA」、インターネットイニシアティブの「MOGOK」、ファーストサーバの「Node Ninja」、TISの「eXcale」、サイボウズの「kintone」、パイプドビッツの「SPIRAL(R)」、ペパボの「Sqale」などがPaaS市場に参入し、市場のシェア獲得を狙っています。

PaaS市場が混沌とする状況の中、クラウド事業者は、Open PaaSのように、上位レイヤーにサービスをシフトしつつ、クラウド事業者同士の互換性を持ち、サードパーティーとの連携によるオープンなエコシステムを形成していくことは、この先、クラウド市場において競争優位に立つ上でも重要なアプローチの一つとなっていくでしょう。