Azureが日本国内リージョンを発表、 VMware、SAPがパブリッククラウドへ本格参入

掲載者:CUPA総合アドバイザー 新野 淳一

SAPが基幹業務向けのクラウドを発表、VMwareもついに自社運用のIaaSを発表、そしてマイクロソフトがWindows Azureの日本リージョンを発表するなど、5月もクラウド関連の大きなニュースが続きました。Publickeyの記事から動向をまとめました。

Windows Azureの国内リージョンを発表。首都圏サブリージョンと関西圏サブリージョンの2つ

日本マイクロソフトは5月23日に記者発表会を都内で開催。来日していた米マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏が、Windows Azureの日本国内におけるデータセンター設置を発表しました。

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日本のリージョンは2つのサブリージョンから構成されており、1つは首都圏におかれ、もう1つは関西圏におかれる予定。「日本での展開により、コンプライアンスに対応し、レイテンシでもパフォーマンスの点でも対応することができるようになる」(バルマー氏)。首都圏と関西圏にサブリージョンが設置されることにより、国内での地域分散ができるようになり、ディザスタリカバリーも国内リージョンで完結できるようになります。日本マイクロソフト代表取締役 社長 樋口泰行氏は、公共や金融機関などの顧客への利用促進を期待すると発言しました。提供開始時期は未定ですが近々とのことで、価格についても未公表ですが、Windows Azureは現時点でグローバルで同一価格を採用しているため、日本リージョンでも同様の価格になると推測されます。

VMwareがパブリッククラウド市場に本格参入。「vCloud Hybrid Service」はオンプレミスのVMware環境との互換性が特長

VMwareは5月21日、パブリッククラウドとなる「vCloud Hybrid Service」を発表しました。VMwareは、パッケージベンダから、自社でデータセンターのインフラに投資しクラウドサービスを提供するサービスベンダーへと踏み出します。同社は、パブリッククラウド市場でAmazonクラウドやWindows Azureなどと直接競合することになります。vCloud Hybrid Serviceの最大の特長は、オンプレミスのVMware vSphere環境と互換性があるため、そのままパブリッククラウドへ移行できる点にあります。

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既存のVMware vSphere環境で稼働しているあらゆる業務アプリケーションは、そのままクラウド化が可能。また、当然ながらVMwareが提供する同一ツールでオンプレミスとクラウドの両方を管理可能。また、既存のデータセンターのネットワークをレイヤ2、レイヤ3のレベルでvCloud Hybrid Serviceに拡張し、セキュアな仮想ネットワークの構築が可能と説明されています。

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VMwareはこれまで、同社ソフトウェアを用いたパブリッククラウドについてはvCloudとよ呼ばれるパートナー認定制度によって、パートナーによる展開を推進してきました。日本国内ではソフトバンクテレコムが認定パートナーとしてサービスを開始しています。しかしvCloudがパブリッククラウド市場で存在感を得ることはできておらず、一方でAmazonクラウドやWindows Azure、Google Cloud Platformなど、大手パブリッククラウドのプレイヤーは急速に強化を進めています。企業向けのプライベートクラウド向けソフトウェアではトップを走るVMwareですが、パブリッククラウドでの存在感の薄さは、この先の成長戦略に大きな影を落としつつありました。これを巻き返すには、自社でパブリッククラウドを提供する以外にないという決断をしたのでしょう。vCloud Hybrid Serviceは、米国で今年の第3四半期に正式リリース予定。日本を含むアジア太平洋地域では、2014年にリリース予定です。

SAP、ミッションクリティカルなERP/CRM向けクラウドサービス「SAP HANA Enterprise Cloud」を発表。基幹業務に特化したベアメタルサーバと仮想プライベートクラウド

SAPは、同社の主力製品であるSAP Business Suiteを、ミッションクリティカルな基幹業務向けにクラウドで本格的に提供するサービスを発表しました。「SAP HANA Enterprise Cloud」は、同社の専用データセンターを基盤にインメモリデータベースであるSAP HANAを用い、その上にERP/CRMなどの機能を持つSAP Business Suiteと、データ分析機能を備持つNetWeaver Business Warehouseなどのアプリケーションを提供します。

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SAPはSAP HANA Enterprise Cloudを、大規模でミッションクリティカルな基幹業務用途を対象にしたクラウドサービスと位置づけています。ついにSAP自身が、ミッションクリティカルなシステムをクラウドで提供するサービスを開始したことになります。SAP HANA Enterprise Cloudの特徴は、単に基幹業務向けの大規模システムをクラウドで提供するだけでなく、その基盤にHANAを中心とするインメモリコンピューティングの技術を組み込むことで、トランザクション機能だけでなく分析機能も含めて高速に、SAPの表現を借りればリアルタイムに、処理を行えるところにあります。この性能を発揮するためは、多くのメモリを搭載した物理サーバのスケールアウトと、それに耐える高速なネットワークが求められます。SAPはこのために専用のデータセンターを Arista Networksやシスコ、IBMなどと協業して構築。500TBを超えるインメモリをスケールアウトによって実現したと説明しています。同社テクノロジー&イノベーション担当役員 Vishal Sikka氏のブログによると、クラウド内は顧客ごとに専用のネットワーク、ストレージ、物理サーバが用意されるとのこと。ネットワークはSoftware-Defined Networkでマルチテナント化、サーバは物理サーバのまま提供されるため、実質的に他の顧客と資源を共有しない仮想プライベートクラウドになっている模様です。SAPこの新しいクラウドの構成管理するためのシステム「SAP Cloud Frame Technology」を開発。わずか数分で物理サーバ群をいわゆるベアメタルのままプロビジョニングできることが、記者向けの発表会にて紹介されました。SAPがわざわざベアメタルを前提としたクラウド構成管理のシステムを開発したのは、仮想サーバを前提とした従来のクラウドでは、ガバナンスルールなどの面で他社と資源を共有することを嫌う顧客が多いことと、インメモリコンピューティングの性能を仮想化のオーバーヘッドなしに提供するためでしょう。こうした要件を満たすためにクラウド基盤から開発し直した点で、クラウドで基幹業務アプリケーションを提供することに向けた同社の本気度がうかがえます。