ARMを用いた高密度サーバのロードマップとExadata採用を発表したSalesforce.com

掲載者:CUPA総合アドバイザー 新野 淳一

いま、クラウドのデータセンターで稼働しているサーバは、事実上すべてx86サーバといえます。そしてサーバは、より高密度で高性能を志向して進化しています。そこで注目されているのが、もともと組み込み向けとして非常に高い電力効率を実現すべく設計されたARMプロセッサをサーバ用に転用したARMサーバです。一方、大手クラウドベンダのセールスフォース・ドットコムは、より高密度で高性能を追求した結果として、現在使用しているDELLのサーバをOracle Exadataで置き換えると発表しました。今月はクラウド向けサーバ市場に波乱をもたらしそうな、この2つの動向についてのトピックをPublickeyの記事から紹介します。

「ARMサーバは単にx86プロセッサを置き換えただけではない」。ARMサーバ市場をリードするCalxedaに聞く

ARMプロセッサを用いたサーバ市場で最も存在感のある企業がCalxeda(カルゼーダ)です。同社はARMプロセッサを用いたサーバのチップセットやリファレンスデザインをサーバベンダ向けに提供する企業であるため、それほど知名度は高くありません。しかし同社のARMサーバをヒューレット・パッカードがProject Moonshotで採用するなど、ARMサーバ市場をリードする立場にある企業の1つです。台湾で行われたComputexの直後に来日した同社アジアセールス&ビジネス開発担当 Aaron Grassian氏に、x86サーバとARMサーバにはどのような違いがあるのか? ARMサーバの適用分野や今後のロードマップなどについて、インタビューを行いました。

20130710_niino_1
Calxeda Director of Asia Sales & Business Development Aaron Grasian氏

まずはGrassian氏による、Calxedaの製品紹介について。Calxedaは2008年にテキサスで創立した会社だ。ARMベースのサーバを設計するふたつのチームを社内に抱えている。ARMはとても電力効率の高いプロセッサで、これをサーバに利用するため、エンジニアチームには携帯電話メーカーに在籍したエンジニア、サーバベンダにいた経験のあるエンジニアの両方がいる。2011年にヒューレット・パッカード向けに最初の製品を出荷し、現在はそこから第2世代、第3世代へと進んでいる。ARMベースの優れたサーバを作るには、単純にプロセッサをARMに変更するだけではできない。わたしたちのアーキテクチャは、チップセットにI/Oやネットワーキング、スイッチ、マネジメントなどさまざまな機能が備わっている。

20130710_niino_2

完全なサーバ機能をチップに載せた「サーバ・オン・チップ」(SoC:Server on Chip)だ。4コアのCoretex-A9に、われわれが実装したL2キャッシュとメモリコントローラを加え、SATA、PCIe、イーサネットなどのI/Oコントローラ、80GBクロスバーのスイッチ、エナジーマネジメントエンジンも搭載した。これに4GBメモリを加え、全体でわずか5ワットの消費電力しかない。これはそのEnergyCore SoCが1つの基盤に4つ搭載されたもの。これだけで4台のサーバということだ。

20130710_niino_3

ARMプロセッサはカスタマイズなどをしていないので、ARM用のLinuxはそのまま実行できる。またFedoraは先日、Calxedaをスタンダードなビルドプラットフォームに選んだと発表した。先日のComputexでは、3つの新しいパートナーを発表した。AAEON、FOXCONN、GIGABYTEだ。AAEONは1Uのストレージアプライアンスサーバを発表した。低消費電力のプロセッサはストレージサーバにとても適している。FOXCONNも4Uのストレージサーバを発表し、こちらは非常にパワフルなモデルになっている。GIGABYTEが発表したのは2Uのサーバで、WebホスティングやLAMPスタックの運用に向いている。続いてGrassian氏にインタビュー。

──── Calxedaは、ARMのようなプロセッサメーカーではないし、一方でデルやヒューレット・パッカードのようなサーバベンダでもなく、台湾などのOEM/ODMメーカーでもないユニークなポジションにあるように思う。御社の狙いはどこにあるのか?
私たちが目指しているのはデータセンターの革新だ。私たちから見ると、ARMは知的財産(IP)のパートナーであり、OEM/ODMは顧客になる。モバイル向けだったARMチップをサーバに入れるには、メモリやI/O、スイッチなどのファブリックをどう作るか、大量のサーバをどう管理するのか、といったことを理解しなければならない。単にインテルのチップをARMに入れ替えてもうまくいかないのだ。
こうした細部にまで対応することが必要であり、私たちはそうしたチップやデザインをビジネスにしていく。

──── まだARMプロセッサには32ビット版しかない。サーバ向けには64ビット版が期待されるが、今後のロードマップは?
それはもう何度も聞かれる質問だ(笑)。いまいえるのは、現在の利用状況であれば32ビット版で十分快適に使えるということだ。
64ビット版ARMのハードウェアは、来年にはサンプルが手に入るだろう。しかし全体のエコシステム、LinuxやJava VM on ARMやアプリケーションといったものが揃うのには、さらに時間がかかる。そうしたものが揃って成熟するのには、そこからまだ1年2年はかかるのではないだろうか。

──── ARM版サーバでどのようなアプリケーションが期待されているのか?
もっとも問い合わせが多いのは、やはりストレージ関連だ。ほかにもWebアプリケーション、大規模なコンピュートグリッドなどもある。ビッグデータ関連でも、Hadoop、Cassandra、mongoDBなどが試されている。これらはスケールアウトの能力が高いため、ARMサーバと非常に相性がいいのだ。

ARMコア64ビットサーバは2014年後半に登場予定。AMDがサーバ向けプロセッサのロードマップ公開

昨年10月に、ARMベースのサーバ向けプロセッサ開発を表明したAMDが、最新のロードマップを明らかにしました。

20130710_niino_4

2014年後半に登場予定のARMコア64ビットプロセッサは、コード名「Seattle」。AMDのプレスリリースから引用します。Seattleは、実績のあるサーバプロセッササプライヤから登場する唯一の64ビットARMベースSoC(System-on-a-Chip)となるだろう。Seattleは、ARM Cortex-A57コアをベースに8もしくは16コアCPUとなり、2GHzかそれ以上で作動する。上記の説明で、わざわざ「実績のあるサーバプロセッササプライヤから登場する唯一の」と書いてあるのは、おそらくほぼ同時期にCalxedaなどほかのベンダからも64ビットのARMプロセッサが登場するからだと想像されます。AMDがARMプロセッサを用いた低消費電力高効率なサーバ向けプロセッサへと本格的に向かうことが誰の目にも明らかになったのは、同市場向けサーバを提供していたベンチャーのSeamicroを昨年買収したときでした。以下もプレスリリースから引用。今回発表されたSeattleにも、SoCの中にSeamicroのファブリック技術が統合されています。128GBのDRAMをサポートし、より電力効率を高めCPUの負荷を下げるため、サーバ内暗号化、データ圧縮、10GbEを含むレガシーネットワークなどの拡張オフロードエンジンを搭載。また、AMDにとって高密度コンピュートシステムのための先進的なFreedom Fabricをチップに統合した最初のプロセッサとなる。Seattleは2014年第1四半期にサンプル出荷し、後半に製品出荷の予定だ。発表されたロードマップには、x86プロセッサでWebサービス用途などを想定した新プロセッサとなるコード名「Berlin」と、エンタープライズのメインストリームサーバ向けを想定した「Warsaw」も含まれています。

セールスフォース・ドットコム、クラウド基盤にOracle Exadataを採用へ。オラクルとセールスフォース・ドットコムが提携発表
 

セールスフォース・ドットコムとオラクルは、クラウドのプラットフォームからアプリケーションに渡る広範囲な提携を発表しました。
提携の内容は、セールスフォース・ドットコムがオラクルのプラットフォームを採用する一方、オラクルが自社アプリケーションにセールスフォース・ドットコムのサービスを統合するという2つの要素で構成されています。クラウドプラットフォームに関しては、セールスフォース・ドットコムがOracle Linux、Exadata、Oracle Database、Javaミドルウェアプラットフォームを採用する計画。アプリケーションの分野では、オラクルが人材管理アプリケーションのFusion HCM、およびFinancial CloudにSalesforce.comのサービスを統合する計画です。セールスフォース・ドットコムは創業当初から基盤のデータベースにOracle RACを採用してきましたが、サーバのハードウェアはデルを、ミドルウェアはResin Java Application Serverを採用していました。今後はクラウドの基盤としてオラクルのExadataとソフトウェア製品を採用することになります。一方のオラクルは、同社が提供する統合業務アプリケーションにおいてセールスフォース・ドットコムが提供するSFAやCRMなどと競合してはいるものの、そこを乗り越えて人材管理や財務管理などのアプリケーションとセールスフォース・ドットコムのサービスを統合することになります。セールスフォース・ドットコムはクラウドの基盤的技術をこれまで以上にオラクルに依存することになり、一方でクラウド市場で出遅れているオラクルは、クラウドでのサービス展開にセールスフォース・ドットコムの力を借りるように見える今回の提携。かなり緊密な内容に見えます。